FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

#14-ルチャリブレを見に行く

 このページでも触れているのだが、以前の滞在時にCuernavaca(=クエルナバカ)にあるArena Isabel(=アレナ・イサベル)というアリーナでルチャリブレ(プロレス)を見に行こうとしたら講師であるミゲルにウソの開催日を教えられたがために結局見れなかったため、この滞在時に何とか見てみたいとは常に思っていた。

 Arena IsabelはCentro(=セントロ・繁華街)の少し外れたところにあって、アリーナの壁には開催のポスターが貼ってあるのを知っていたので度々チェックしていたのだが、毎回平日夜の遅い時間帯に開催しているということと、講師曰く「ああいうところはあまり健全なところではない」という忠告に二の足を踏んだまま時間だけが経ってしまった。
 しかし、カードを見た限りでは全国区で有名な選手が多数出場しているし、更に言えばそもそもはルチャをライブで観戦することがメキシコに来た最大の目的でもあるので、重い腰を上げて誰かをぼくの保護者として付き添ってもらうことにした。
 とはいえ講師陣とはプライベートの付き合いはないし、現在通っているスペイン語学校に住み込みで働いている青年・マリオは一切興味がないようで気乗りしていないし、スイス人生徒のアンナからはかなり露骨にに嫌われている詳細はこのページで、ヨハンナはとっくにどこぞへ行ってしまったという状況を考えると、消去法でクラスメイトのタツしか該当者がいない。

 早速彼のステイ先に電話したら(※当時はまだ外人が携帯電話を気軽に持てるほど本体もインフラも普及していない時代だ)家の人が出たので、

 「Quisiera hablar con Tatsu(=キシエラ・アブラール・コン・タツ。“タツと話をしたいんですが…というような言い回し”

 と伝えたところ、10秒ほど待って電話に出てきたのはなぜかこの家のおばあさんだった(※おばあさんに関してはコチラコチラを参照)

 因みにおばあさんの名前はMicaera(=ミカエラ)なので、さっき出た人は“キシエラ”“ミカエラ”に聞こえちゃったのかな? と一瞬思ったが、さすがにぼくもそこまで滑舌は悪くないのでそういうわけではないだろう。まあ、せっかくだからこのままおばあさんを誘うのもアリかな? とも思ったが、万が一OKされたらかなりアレなので、丁重にタツに代わってもらうことにした。彼からルチャとかプロレスの話題が出たことはないが、彼も一度は見てみたいと思っていたようなので、すんなりと彼はぼくの保護者を買って出てくれた。

 
 そして当日。
 開場は夜の9時らしいのだがチケットは当日に会場だけでしか売らない上、全て自由席ということはわかっていたので8時頃に会場に着いたのだが、既にけっこうな行列ができていていた。
 会場の前にはいくつかの露店がひしめいていて、ソフトドリンクやスナックを売る店や、レスラーのマスク(応援用のおもちゃ程度のクオリティ)、レスラーの人形を売る店があったりと、かなり活気に満ちているではないか。こういう光景を目の当たりにするのも海外生活の醍醐味の一つである。

Arena_isabel, Cuernavaca, mexico, Lucha_libre, メキシコ, クエルナバカ, ルチャリブレ, アレナ・イサベル,
会場前のマスクの露店。質が悪いがけっこう安いので今では旅行土産で買う人も多いとか多くないとか。


 とりあえず列に並んでいたのだが、やはり地方都市の会場ともなると日本人客はぼくらだけのようで周囲からわりとジロジロ見られたのだが、露店ではなく手売りでマスクを売る行商人にロックオンされるや、

「おまえら日本人だろ? Ultimo Dragon(=ウルティモ・ドラゴン)知ってるか? 彼のマスク持ってるから買ってけ」

 と、かなりしつこくセールスされた。これまたこういう光景を目の当たりにすると、やはり彼もこの地で大成功をおさめたのだなと痛感した。

ultimo_Dragon, ウルティモ・ドラゴン, ルチャリブレ, Lucha_libre,Ultimo Dragon(=ウルティモ・ドラゴン)
メキシコで最も成功した日本人レスラー。1987年にメキシコへ渡り、1991年にこのキャラへチェンジして大ブレイクし、メキシコと日本を股にかけて活躍。1996年にはアメリカにも進出し、当時隆盛を極めていたWCWでは軽量級戦線の中心選手として歴史に名を刻む。2004年には短期間ながらWWEにも登場した。現在も選手として世界を舞台に活躍する一方、自ら設立したレスラー養成学校・闘龍門MEXICOの校長として次世代の選手を育成している。1966年12月12日生まれ。



 何だかんだで開場となり、せっかくなので値段がやや高い1階席を買ったのだが、1階席と2階席という区分け以外は値段に関係なく全席自由ということもあって、他の客は少しでもリングに近い席をゲットすべく少々殺気立っている。ぼくらも申し訳で程度に足早になりながらもなかなか良さげな席をゲットし、開演を待つこととなる。

 
 余談になるが、この当時までにぼくが知り得たルチャリブレの特徴というのは、とにかく空中戦の応酬が花形であり醍醐味だと思っていた。

 今でこそYOUTUBEにはルチャに関する動画は有象無象に転がっているが、この当時までは映像ベースでルチャを見たことが殆どなく、紙媒体でしか情報を得ていなかった。
 しかも、日本ではプロレス人気はそれなりに高くてもルチャ自体の人気も知名度も大して高くなかったため情報の数にも限りがあったのだが、それでも積極的にルチャの情報を取り上げていた当時の専門誌・『週刊ゴング』(既に廃刊)では空中戦に定評のある選手を中心に特集していたこともあって。ぼくの頭の中では勝手な世界観が構築され、極論を言ってしまえばこれからを行われる全ての試合は、下の動画のような展開が繰り広げられるに違いないと思いながら開演を待ちわびていたのだ。

こんなアクロバティックでトリッキーな展開を



 そんなことを思っていたら会場が暗転し、ようやく開演となった。


 そして、何だかんだで6試合くらいの試合を堪能したわけだが、結論から言ってしまえば“思ってたのとは全然違った”というのが正直な感想だった。

 それなりに空中戦の応酬が繰り広げられた試合もあったが、見た限りではどの試合も日本と比べると選手間の予定調和な動きがかなり露骨で、見方によっては終始グダグダな展開の試合もあったので、必ずしも“ルチャリブレ=アクロバティックでトリッキーな試合”とは限らないものなのだということを痛感した。
 そもそもルチャの根底にあるのが“勧善懲悪”らしく、“正義のヒーローがにっくき悪者をいかにしてしてやっつけるか” が基本コンセプトのようなので、要するに仮面ライダーショーとか水戸黄門的な視点でも見れるかで面白さも変わってくることはわかった。


 とはいえ、それはそれとしても会場の空気は全体を通してかなりエキサイティングで、観客はテクニコ(=善玉の選手。アメプロで言うベビーフェイス)の選手には一挙手一投足に最大限のエールを一斉に送り、ルード(=悪役の選手。アメプロで言うヒール)の選手には人格をも否定しかねないほどひどすぎる罵声を最大限に浴びせるあたりはなかなか興味深い。この場にいれば望まずとも相手の神経を逆なでするようなスラングがすらすらと頭に入るのは間違いない。講師陣が言っていた“健全ではない場所”とは、正にこの罵声合戦のことだろう


 確かに試合そのものはぼくが思っていたようなものではなかったが、日本やアメリカのそれとは違う面白さというか楽しみ方を見つけた感じがしたので、長年の念願が叶ったこともあって実に実りのある時間ではあった。

Arena_isabel, Cuernavaca, mexico, Lucha_libre, メキシコ, クエルナバカ, ルチャリブレ, アレナ・イサベル,
とても暗いが当時の試合風景。割とリングに近い席を取れたので臨場感はなかなかだった。


 そして、この日以降ぼくは1人でも足繁くこの会場に足を運ぶようになった。
 もちろん全ての興行を見に行ったわけではないが、この平日開催の興行だけでなく週末の夕方にも行われることを後に知ったので、むしろそっちの方に足を運ぶことが多かった。

 といっても週末開催の方は有名どころの選手は一切出場しないローカル興行で、恐らく地元でも大して知られていないであろう無名の選手しか出場しないのだが、その分チケット代は激安だったし、観客数もかなりまばらだったためにゆったりと観戦できるのがかなり魅力だった。
 ぼくはどの娯楽やスポーツに対してもあまり声援を送りながら観賞するタイプではないので、周りにはポツポツとしか人のいない2階席の片隅で、ポテチとコーラを腹に流し込みながら「この選手はなかなか素質あるな」とか「この選手はまだ基本的な動きがぎこちないかな」などとスカウト気取りで試合を見る自分が好きだったというのもある。

Arena_isabel, Cuernavaca, mexico, Lucha_libre, メキシコ, クエルナバカ, ルチャリブレ, アレナ・イサベル,
非常に暗いが当時の休日開催の会場内。個人的には独特の場末感が心地よかったりする。


 因みにそのArena Isabelだが、どうやら2009年に閉鎖して2010年に取り壊されたという出典はこのページ。ただしスペイン語
 元々かなりの老朽化が進んでいたのでこの話を知った時は改築のためかと思ったが、どうやらオーナーが土地の権利関係も含めて全て別の業者に売却したらしいので、別の会場を確保していなければCuernavacaから常打ち会場が消えたことになる。地方都市の会場とはいえ56年もの長い歴史を持ち、由緒あるタイトルマッチや名選手同士によるビッグマッチが幾度も行われた重要な会場だったため、取り壊し時には縁のある往年の名選手たちが集結して別れを惜しんだという。

 これはあくまで私見ではあるが、確かにルチャリブレは全国で定着している昔ながらの娯楽ではある。しかし地域によって人気の差がかなり激しいのは後にいくつかの都市をまわって実感していたのだが、Cuernavacaでの人気はさほど高いとは思えなかったので、これも時代の流れなのだろう。
 Google Earthで確認した限りでは土台らしきものしか作られていないようなのでこの先何が建設されるのかはわからないが、個人的にはそれなりに思い入れのある場所なので、もし再びメキシコを旅行する時にはあそこに何ができたのかを確認することを目的の一つに入れるのも悪くはないと思っている。


【追記】
ルチャリブレは日本やアメリカとルールがちょっと変わっていたり、独自の特徴がけっこう顕著だったりするので、とりあえずわかる範囲で書いてみる。


【大まかなルール】
  • 対戦図式はテクニコ(善玉)vsルード(悪役)が基本。
  • 試合形式は時間無制限の3本勝負が基本で、2本先取した方が勝ちとなる。ただし、大物選手同士によるタイトルマッチやコントラマッチ(マスクや髪の毛を賭けた試合)では、稀に1本勝負で行われることもある。
  • タッグマッチの場合は相手2人からフォールないしギブアップを取って初めて1本奪取となる。
  • 6人タッグの場合は、3人の内の2人からフォールないしギブアップを取るか、各チームのキャプテン(リングアナウンサーから最後にコールされた選手)からフォールないしギブアップを取れば1本奪取となる。
  • 選手1人に対して複数人がかりでフォールもしくはギブアップを奪ってもかまわない場合がある。
  • 試合権利のある選手がリングから降りるとタッチと見なされるため、必ずしもコーナーで控えている仲間にタッチしなければいけないというわけではない。
  • タッグマッチ以上の人数の試合では2人のレフェリーで試合を裁く。【追記】CMLLという大手老舗団体では人数に関係なくレフェリーは一人っぽいが、テレビマッチの動画で確認しただけなので地方興行でも同じなのかは不明。
  • パイルドライバーやツームストンドライバーといった脳天を垂直落下させるような技は使用禁止。使ったのがレフェリーにばれた場合は即座に反則負けとなる。しかしパイルドライバーとかよりも明らかに危険と思われる別の垂直落下系の技を使ってもそのまま試合が進むこともあるので、そのあたりの線引きは厳格というわけではなさそう。
  • 急所への攻撃、不用意なマスク剥ぎも反則。
  • ボクシングが盛んのお国柄ということもあってか、シングルマッチではセコンドが付くのが通例。


【主観も含んだ独特の特徴】
  • 最近ではかなり大柄な選手が多数出てきているが、身長は大体170cm前後で体重も90kg程度の小柄な選手が大半を占めている。
  • 低身長症の選手、いわゆるミゼットレスラーの数も多い。彼らは“Mini Estrella(=ミニ・エストレージャ)と呼ばれていて、キャラクターやリングネームも“既存の選手のミニ版”という扱いが主流。一般のレスラーよりもスペクタクルでアクロバティックでコミカルな試合展開が特長で、中には本家よりも人気が高い選手もいる。ただしこのカテゴリーには、レスラーにしてはかなり小柄とされる一般の選手(ボクシングで言うバンダム級とかフェザー級とか)も含まれる。
  • シングルマッチは遺恨精算の最終決着方法ということになっているので、タイトルマッチやコントラマッチといった大一番でしか行われない。ただし、無名選手同士による前座の第一試合とかで組まれることはある。【追記】CMLLではしばし人気選手同士によるノンタイトルのシングルマッチを行っている模様。
  • ルチャの基本が勧善懲悪なので、テクニコ同士もしくはルード同士の試合はまず行われない。ただし一過性の話題づくりやプロモーターによる客寄せ案として、稀にテクニコとルードの混合タッグマッチが行われたりする。
  • ルールがルールだけに1試合あたりの時間はなかり長丁場になると思われがちだが、大抵は誰かが負けたら仲間も即座に負けるし、場合によっては仲間全員が同時に負けることも多々あるので必ずしも長丁場になるとは限らない。
  • 2-0のストレートで試合が決まることは滅多にない。
  • レフェリーが2人いたところでより厳密に試合が裁かれるとは限らないため、結局はあっさりと反則を見逃したり判定を巡ってレフェリー同士が対立することも多々ある。
  • セコンドといっても、ボクシングのようにインターバルにアドバイスをしたり傷の手当てをするというようなことはしない。基本的には普通に応援したり観客に応援を促したり、リング外に味方が降りた時に手持ちのタオルで体を扇いだりする程度だが、場合によってはレフェリーの隙を見て試合に介入し、味方にとって有利な状況をつくることも。
  • 試合の合間や休憩時間であれば誰でもリングに上がれるため、特に地方の興行ではチビッ子たちがこぞってプロレスごっこを楽しむという実に微笑ましい光景を堪能できる。※ただし全国ネットで放送している興行に関しては、WWEのように大がかりなフェンスでリングを囲んでいるので不明。
  • かなり特殊な世界ということや、ある意味伝統芸能の要素が強いこと、お国柄としてファミリーの絆が強いこと、業界以前に社会的に子だくさんな家庭も多いこと等も影響してか、二世・三世選手の数が非常に多い。近年になって四代目の選手もちらほら出てきたとか。アメリカやカナダのプロレス業界でもそういった傾向は強いが、メキシコの場合はそれ以上に顕著と言える。そのため、親兄弟や親戚も含めて一家全員がレスラーもしくは関係者というケースもざらにある。むしろ、ルチャと関係している血縁者がゼロという選手の方が少数派である【ルチャファミリーの参考ページ】


【参考として、WWEに登場したメキシコ人及びメキシコ系アメリカ人選手の家庭環境に関して追記】

  • 選手の子ども同士による結婚や女子レスラーとの職場結婚も多いため、一見接点がなさそうな選手同士でも実は義理のきょうだいとか義理の親子関係というケースもかなり多い。
  • そういう環境のためか、過去に人気を呼んだドル箱カードや往年のタッグチーム等が子ども・孫の代で再現されることもある。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : メキシコ
ジャンル : 旅行

tag : メキシコ留学体験記2 ルチャリブレ Ultimo_Dragon ウルティモ・ドラゴン Arena_Isabel アレナ・イサベル

コメントの投稿

非公開コメント

スポンサードリンク
ブログランキング



宜しければクリックを
お願いいたします。
ブログ内検索
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
プロフィール

800ランプ

Author:800ランプ
ルチャリブレがきっかけでメキシコに興味を持つ。
20世紀末、突然そのことを思い出しメキシコへ。民間の語学学校で言葉を学びつつ、運の良さも手伝って浮世を忘れるほどの生活を満喫。
以降も帰国してはお金を貯めては渡墨し、また帰国してお金を貯めては渡墨ということを繰り返していたら、社会のレールから脱落したので日本に落ち着く。
しかし先日、わけあって現実逃避もかねてまた渡墨。今回の日記はそのときのもの。

最近のトラックバック
amazon
スポンサードリンク
リンク
タグクラウド

RSSフィード
By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。