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#07-Cuernavacaのかつての自宅へ行ってみる

 メキシコでの生活もそこそこ慣れてきた実感が出てきたとある日の授業終わりのこと。
 いつものように学校内にある中庭のベンチで日本人生徒同士でくっちゃべっていたときにクラスメイトの一人であるタツから「明日、何か予定ある?」と聞かれた。
 理由を聞いてみると、彼のホスト先の人が「せっかくまたここに戻ってきたのだから、たまには顔の一つでも見せに来ればいいのに」とせっついていたようで、要は昼食を食べさせてやるから家に来るようにと伝言を頼まれたようだ。

 これまでに何度か書いているが、今回こそ語学学校にある寮をねぐらにしているものの実はここに来たのは実質2度目で、初回はタツが現在世話になっているホストファミリーがねぐらだった。本来ならば二度目も同じステイ先にしたかったのだが、経済的理由でホームステイよりも安くすむ寮にしたわけだ。
 もちろんそのことは入学手続きの際に学校に、

「今回は経済的な理由でやむを得ず寮を選ぶが、ホスト先には今でも感謝しきれないほどのほどこしを受けたことは忘れていない」

 というような伝言を頼んだにもかかわらず、学校側はそのことを一切伝えなかったため、

 「誠心誠意もてなしたつもりなのに、我が家に何か気に入らないことでもあったのか?」

 と勘違いしているようで、ちょっとおかんむりらしいということはタツから聞いていた。なので、もう少しメキシコでの生活が落ち着いたら顔を出そうとは思っていたのだが、図らずも向こうから声がかかることになったのだ。

 というわけで翌日の授業終わりに、タツと一緒にホスト先に赴くこととなった。このページで触れているように、彼はフライドチキンのタダ食いと日本人としてのプライドのために足を捻挫してしまい、松葉杖が欠かせない生活を余儀なくされているが、この頃になるとだいぶ良くなったようで、未だに松葉杖は必要なものの学校から家までは車を頼ることなく移動できるくらいまでに回復している。

 久々に学校からホスト先までの道のりを歩いてみたが、数ヶ月前のこととはいえ実に懐かしく感じる。ソフトドリンクやタバコを買いにちょくちょく立ち寄った小さな自営の商店、塀を越えて生い茂る民家の木、家の壁に飾られている別の家の鉢植え、所々がはげている細い道……。視界に入る全てのものに懐かしさと新鮮さが同居するような感覚を覚えるのは実に不思議である。


メキシコ, Mexico, クエルナバカ, Cuernavaca, 通り, Calle, tienda
メキシコ, Mexico, クエルナバカ, Cuernavaca, 通り, Calle
かなり汚い画像だが、こんな感じの道程


 そんな感慨に耽りつつホスト先に到着。タツが門を開けると、これまた感慨深い風景が視界に飛び込んでくる。ホームパーティが出来るほど広い庭には手入れ された芝生は青々としているし、花々は鮮やかに咲いているし、軒先には鳥かご吊されていて、小鳥が所狭しに飛んでいる。日陰には家族がくつろぐためのプラ スチックの椅子置かれているし、相も変わらず強い日差しが照りつける……。うーん、何もかもがあの時のままだ。今さらながら、改めてまたここに戻ってきたのだなと痛感せずにはいられない。


 そして家のドアの開けると、まずは嗅覚を刺激した。
 独特ながらも安心感を覚える家の匂いと、学校から帰ると必ず漂う昼食のメニューがミックスされたこの匂いは、まごうことなき“あの時の自分の家”だ。
 もちろん視覚面も同様で、家具や調度品、適度なボリュームで聞こえてくる滝の音、この昼下がり独特の静けさなどは全てあの時のままだ。何もかもがフラッシュバックしたせいか、やっぱり少々無理をしてでもまたここのお世話になるべきだったのかも、と少し後悔もした。


 ドアの開閉音に気づいたのか、昼食を作っているおばあさんがキッチンから顔を出した。ぼくの姿を見るなり、
 

 「あらまあ、今日はよく来てくれたわね。元気だった?」

 というような感じでにこやかにハグしてくれた。少し怒っているのではないかと少々心配していたが、どうやらそんなことは一切ないようなのでホッとした。

 そして、二階からこの家の主であるジャン・ギャバン似でおなじみのおじいさんの姿が見えた。年齢的にも足腰はあまりよろしくないようで、一段一段をゆっくりと慎重に降りている。彼もぼくの姿を見るなり、

 「何だ、君か。久しぶりだな。調子はどうだ?」

 とにこやかに右手を差し出してくれた。
 握手もほどほどに、「昼飯を食べに来たんだろ? 遠慮しないで座ってくれ。ここは君の家じゃないか」というような感じで椅子に座るように促してくれた。やはりこの家の住人は暖かいではないか。

 
 とりあえず料理が出来るまでの間はおじいさんとタツと3人でご歓談タイムに入る。
 本来ならば、時間を忘れて思い出話に花を咲かせ……、と言いたいところなのだが、元々タツはネイティブばりにスペイン語が堪能な上に誰とでも仲良くなれる社交性を持っているので、この場での中心はやはり彼である。
 そういえばおじいさんはかなり寡黙だったこともあり、たまの会話でも大して成立しなかったので、「自分にはまだ語学力が足りないな」としょげたものだが、社交性も語学力もかなり豊かなタツだったら自然に会話の輪に入れるんだろうなと思ったが、傍から見ていても大して成立しているようには見えないところを見ると「ああ、必ずしも自分のせいだけじゃなかったんだな」と気づいたのはある意味収穫だった。

 そうこうしているうちに料理が出来たようで、おばあさんご自慢の料理がテーブルに並べられる。
 いわゆるアピタイザー的に出された、小さなマカロニがたくさん入った具だくさんスープは大抵の昼食で出たおなじみのメニューだ。特に変わった具も調味料も入っていないが妙に美味しく、何だか、子どもの頃の昼飯の定番だった、野菜炒めが乗ったインスタントラーメンのような郷愁を思わせる。こういうのが“家庭の味”というやつだろう。

 そして出されたメインディッシュは、メキシコでは家庭料理の定番であるMole(=モーレ)だったのだが、このページでも触れているように、見た目こそカレーに似てなくはないので美味しそうに思えるが、少なくともぼくの口にはぶっちぎりで合わないことでおなじみである。初めて食べたときは、口に合わなくても残してはいけないと思い無理矢理コーラとかで流し込んでまで食べたのだが、おばあさんには“美味しそうに残さず食べてくれるから作りがいがある”と映ったようで、前回の滞在時にはけっこうな頻度で出た。今回これが出たのも、おばあさんなりのやさしさだろう。

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Mole Poblano(=モーレ・ポブラーノ)
メ キシコを代表する家庭料理で、メキシコシティにほど近いPuebla(=プエブラ)と、南の方にあるOaxaca(=オアハカ)のモーレが国内では特に有 名。多種多様のモーレがあるようだが、何種類もの香辛料やナッツ類をチョコレートベースのソースに混ぜ、チキンにかけるのが一般的と思われる。ゼロベース からでも作るが、固形のルーも市販されている。

モーレのレシピ動画。材料は日本でも手に入らないことはないので、それっぽいのなら作れるかも。Wikipediaの解説はこちら




 因みにタツもMoleは好きではないようで、けっこう早い段階で「申し訳ないけどMoleは自分の口にあまり合わないから、なるべくなら出さないで欲しい」と申し出ていたため、まさかこれが出てくるとは思わなかったようだ。


 「モーレが好きって相当珍しくない? まさかこれが好きっていう日本人がいるとは思わなかった」
 「俺だって本当は好きじゃねえんだよ。でも向こうが好きだって思って作ってくれた以上はしょうがねえだろ! いいからタツも残さず食え。それが“大人になる”ってもんだ」


 ……と少々自暴自棄になってしまったが、何とか今回もコーラと水の力を借りて完食した後は、庭の軒先で食休みもかねてタツとくつろいでいた。相変わらずおばあさんは家事に追われているようで、おじいさんも食べ終わったらさっさと自分の部屋へ戻ってしまったので、なかなかこの家の人と話す機会はなさそうだ。

 そう思っていたら、おばあさんは何やらぼくに何かいろいろなものが入っていそうなビニール袋を渡してくれた。開けてみると、何やら見覚えのあるサンダルや襟元が伸びきったTシャツ、ヘロヘロのトランクスなどが一緒くたに入っているではないか。

 「前に来たときのあなたの忘れ物よ。捨てようかとも思ったけども取っておいたから持って行きなさい」

 確かにこれらは忘れ物には違いないが、実を言うと忘れたということにしてわざと置いていったゴミである。どうせ捨てるだろうと思っていたが、わざわざ保管しておいてくれたとは何てステキな一家だろうか

 この厚意はムダに出来るはずもないのでやむなくありがたく受け取ったのだが、正直使い道に困る。特につっかけ破けてしまって使用はまず不可能なこのサンダルは、「サンダルを履きたくないときに使う」といったのび太的な発想で乗り切るしかないのが現状である。

 「本当にありがとうございます。そしてお昼ご飯も美味しうございました」とお礼をしつつ、陽もそろそろ暮れかけた頃に帰ることにした。

 
 そしてこの日以降も、タツ以外にもこの後に来た生徒の何人かもこの家に世話になっていたこともあって、適度なペースで顔は出しておいた。その都度歓迎してくれたのは今でも感謝している。


 因みに、モーレの味を説明するのは本当に難しい。
 実際、先日たまたま見たBSだかの紀行番組で黒木瞳がわざわざPueblaまで行って本場のモーレを食べていたのだが、何口食べても適切なコメントが出ないほど困惑していたので、要はそんな味としか言いようがない。



 
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tag : メキシコ留学体験記2 Mole_Poblano Mole モーレ モーレ・ポブラーノ メキシコ料理

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Author:800ランプ
ルチャリブレがきっかけでメキシコに興味を持つ。
20世紀末、突然そのことを思い出しメキシコへ。民間の語学学校で言葉を学びつつ、運の良さも手伝って浮世を忘れるほどの生活を満喫。
以降も帰国してはお金を貯めては渡墨し、また帰国してお金を貯めては渡墨ということを繰り返していたら、社会のレールから脱落したので日本に落ち着く。
しかし先日、わけあって現実逃避もかねてまた渡墨。今回の日記はそのときのもの。

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