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#08- VSメリケン様

<前回のあらすじ>
メキシコ入国最初の朝を迎えたわけだが、家の人は全員出かけてしまって夕食の時間まで帰ってこないらしいし、学校は明日からなので、とりあえず近所を適当に散策した後に家に戻った。
昼食を食べてテレビを見ていたら急激に眠くなったので昼寝を決め込んだわけだが、ドアの開く音で目が覚めた。
しかし、家の人が帰ってくるにはまだ早いし、そもそも家のカギはしっかり閉めたはずだ。
ひょっとしてこれは……



 「まさか、どどどどど泥棒か?」

 直感でぼくはそう思った。
 何せここは日本とは何もかもが違うメキシコだ。決して裕福とは言えない国だけに、白昼堂々富裕層の留守を狙う窃盗団がいても不思議ではない。入国早々、これはかなり一大事だ。

 鍋を頭に被り、竹ぼうきを手にした気分で音の方向へ向かってみる。この家に来てまだ間もないが、それこそ宝石とか土地の権利書でも盗まれたら、役立たず扱いされて荷物と一緒に追い出されかねないではないか。


 目の前を通り過ぎる憧れの先輩にラブレターを渡そうとするシャイな女子中学生ばりにドキドキしながら様子を見ると、確かに見知らぬ女性二人がリビングを占拠している。片方はウーピー・ゴールドバーグとヴィーナス・ウィリアムスを足して2で割ったような人、もう片方はダニエル・カールの姉とウソをついても全員信じそうな感じの人だ。

ウーピーとヴィーナスとダニエル
こんな二人組


 しかもこの二人はかなり図太い神経の持ち主のようで、まるで我が家にいるかのごとくくつろいでいるではないか。しかし、仮にもみ合いになったとしても、何とか退治できそうだ。


 「動くな! この泥棒猫が!」

 犬笛より若干大きいボリュームで一発カマしてやったら、二人の動きは一旦止まった。

 すると事態は意外な方向へ転換する。
 向こうはぼくを見るなり、

 「あら? あなたが今度来るって言ってた日本人?」

 と、握手を求めてきたのだ。
 はっきり言ってぼくはこんなメリケンとは面識は一切ないので、一体何が何やら事態が飲み込めない。
 しかし、ここでアワアワしているのもアレなので、とりあえずここは話し合いの場を持つ。そしてCoolに自己紹介だ。


 「私は常にお客様とのコミュニケーションを心がけ、営業職に勤めて参りました。全ての成果はお客様との綿密なコミュニケーション、お客様の気持ちを汲み取るところにあると考えております。お客様の情報をダイレクトに連携してきた結果、顧客満足度一位を獲得することができました」


 脳内ではこれくらいのボキャブラリーで紹介したつもりだが、恐らく向こうには「I’m チョーノ!」程度にしか伝わってないだろう。


 何でもこの二人はアメリカ人でどっかの州から来たらしく、ぼくと同様この家にホームステイをしている語学学校の生徒で、この週末は二人で近隣の都市を泊まりで観光していたようだ。そしておばあさんから事前に、ぼくが来ることは聞いていたのだという。
 
 兎にも角にも、とりあえず泥棒じゃないとわかれば話は早い。ぼくらは平和条約を結び、辞書を片手にしばしご歓談する。アメリカのこと、日本のこと、メキシコのこと、片手間で儲けるアフィリエイトプログラムの必勝法などを語り合った。ぼくは片言で、向こうはネイティブと話す感覚でベラベラと容赦なく。

 そうこうしていたら一家も戻ってきた。
 この日の夕食は、人が増えたこととウーピー(仮名)もダニエル姉(仮名)も既にスペイン語がけっこうペラペラということもあって、とても賑やかな食事になった。
 といっても賑やかなのはその二人とおばあさんが中心で、ぼくは“自分にあまり発言権のないグループで食事をする羽目になった人”として、口は一切挟まずに時折愛想笑いを浮かべる役割を十二分にこなした。そしておじいさんはマイペースにモグモグやっている。

 夕食も終わり席を外そうとしたら、ウーピー(仮名)がさっきの歓談の続きをしようと提案してきた。どうやらこれまでのぼくのスウィートトークですっかりメロメロパンチになったようだ。まあ部屋に戻ってもインスタント味噌汁の成分表を読むことくらいしかすることがないので、”続きをしてやらないこともない”という態度で了承した。
 ダニエル姉(仮名)の方は「じゃあウーピー、また後でね」と不参加を表明し、さっさと部屋へ戻っていった。そういえばダニエル姉(仮名)はさっきの歓談でもウーピー(仮名)ほど積極的に参加していなかった。もう眠いのか、「リメンバー・パールハーバー!」な思想なのか、生理的にぼくを受付けないかのどれかのだろう。


 何でもウーピー(仮名)はメキシコ料理にかなり興味があるようで、入国してから様々な料理を食べたと言う。確かに彼女の体型と手元のダイエットコークを見れば抜群な説得力がある

 そういえばルイス(日本でスペイン語を教わった講師)は言っていたが、確かにこの国の料理はバリエーションが豊富で、タコスのように全国レベルの大衆食もあれば、限られた地方でしか食べられない郷土料理もたくさんあるらしい。味や食材も様々で、辛いもの、甘いもの、こってりしたもの、あっさりしたものなど、実に多種多様らしい。なので、些細なことでいいからメキシコ料理に関する情報を提供してほしいと言い出した。

 とはいえ、この家でメキシコの家庭料理は食べたが、それ以外となるとドリトスのタコス味とかコンビニのブリトーくらいしか食べたことはない。というかそれらは多分アメリカ発だろうし、アメリカ人のウーピー(仮名)はどうせ現地でほぼ毎日食べているに違いない。
 なので、正直に「食べたことがない」と言ってもよかったのだが、なぜか反射的に「こんな料理を食べたことがある」とデマカセを言ってしまった。
 しかし、ヘタに追求されると絶対にボロが出るので、

 「料理の名前は覚えていないし、一度日本で食べただけなので正式なメキシコ料理かはわからないが…」

 とたっぷり保険をかけた上で、脳内で勝手に料理を創造する羽目になった。メッキでウソを固めるとはまさにこのことだ。

 説明するために辞書で該当の単語を探すフリをして時間を稼いだら、「月桂樹と刻みニンニクをまぶした牛肉のスープ」というのが頭に浮かんだので言ってみたら、ウーピー(仮名)「へー」と興味深そうな表情を見せた。


 さあ、これで一安心。そろそろ話題も尽きつつあったので部屋に戻ろうかと思ったその時だ。
 あろうことかウーピー(仮名)
 「本当にそんな料理あるんですか?」

 と、流しで洗い物をしていたおばあさんに真意を確認するという想定外にも程がある行動を取りやがった。

 はっきり言ってこれはまずい! このメンバーでメキシコ料理に関して最も精通しているのは、明らかにおばあさんだ。たとえその料理が実際にあろうとなかろうと、彼女が「知らない」と言ってしまえば、ぼくはこの家でウソツキ野郎にされてしまう。内心では「信用しろよ!」と言いたくなったが、何せこの時点でウソツキなのだから言えるはずもない

 地下帝国で1本5000ペリカのビールを飲む羽目になるか、それとも地上で焼肉を貪るか……。図らずもぼくの運命はおばあさんが握ってしまった。
 「ざわ……、ざわ……」という空気が辺りを支配し、固唾を飲みながらおばあさんの答えに耳を傾ける。果たして答えは……?



 「うーん、あると思うわよ」


 Yes!!!  Hell Yeah!!!  Awosome!!!  Holy Shit!!!


 こうしてぼくの行き先は地下帝国行きは免れた。


 おばあさんの答えをすっかり信用したウーピー(仮名)「見つけたら食べてみる」とご満悦だが、それにしてもアメリカ人てやつは単純だ。そもそもそんな無難な料理は別にメキシコじゃなくてもどこの国にもありそうじゃないか

 明日から始まる学校を前に、メリケン様を手玉を取るとはなかなか幸先の良いスタートだ。
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テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

tag : メキシコ留学体験記1 ウーピー・ゴールドバーグ ヴィーナス・ウィリアムス ダニエル・カール メキシコ料理 ドリトス タコス アメリカ人

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800ランプ

Author:800ランプ
ルチャリブレがきっかけでメキシコに興味を持つ。
20世紀末、突然そのことを思い出しメキシコへ。民間の語学学校で言葉を学びつつ、運の良さも手伝って浮世を忘れるほどの生活を満喫。
以降も帰国してはお金を貯めては渡墨し、また帰国してお金を貯めては渡墨ということを繰り返していたら、社会のレールから脱落したので日本に落ち着く。
しかし先日、わけあって現実逃避もかねてまた渡墨。今回の日記はそのときのもの。

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