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#05-舞い降りた天空人と更なる試練

 不安に加えてニコチンも早々に切れた挙句、寝てたのをいいことに機内食を一食分逃したり、外人のCAに水を頼んだら白ワインとミックスナッツが出てきたり、前の席の客にMAXまで背もたれをリクライニングされても、見た目が安岡力也ばりに怖そうな人だったので丁重に泣き寝入りするなど、快適とは程遠い空の旅を満喫していたら、どうにか第一目的地であるLAに到着。ただでさえ大恐慌の株価の角度で心は落ちているのに、「前の飛行機が乗り遅れて次の便に乗れなかったので、別の飛行機に乗せてください」と本場のお姉さんに伝えるという、神が与えた試練をぶつける時が来た。


ロサンゼルス国際空港(イメージ)
ロサンゼルス国際空港(イメージ)


 しかしその前に、何はなくとも一服である。十数時間ぶりのタバコだけあって、煙を吸いこんだ途端に頭がクラクラした。
 すると、初老の日本人の集団が同じく一服しにやって来た。
 彼らは同じ飛行機に乗っていたパック旅行の集団である。機内での接点はかったが、

 「着いたらヒルトンで乾杯しよう」
 とか、
 「遺跡巡りが楽しみ」

 などとこっちの気も知らないで危機感ゼロの発言を連発していたので、オリジナルの“絶交リスト”にヤツらの名前を書いてやろうと本気で思っていた記憶がある。

 所詮は他人なので特に目も合わさなかったのだが、なぜか向こうから話しかけてきた。他人でも外国での同胞は心強く見えるのだろうか。

 初老A「お兄さんはこれからどこへ行くんだ?」
 ぼく 「ああ、メキシコです」
 初老A「一人でか? 旅行か? 仕事か?」
 ぼく 「一応留学というか、言葉を勉強しに行く感じですね」
 初老A「おお、そりゃすごいな。若いうちはアレだ、色んなことを経験した方がいいぞ」
 初老B「そうだ、そうだ。昔は海外旅行なんて夢のまた夢だったけど、今じゃ国内旅行より安くなって……」


 ……はっきり言ってそんな会話に付き合っている場合ではないのだが、精神は未だ安定していなかったので、二本目に火をつけた。
 
 初老C「おー、そりゃあ偶然だな。俺たちもメキシコだ。ツアーで遺跡を周るんだよ。だけど成田で出発が遅れて次の飛行機に間に乗れなかったもんだから、今ガイドさんが別の便の手配をしてるんだよ」

 こういうトラブルが起きても責任者が対処をしてくれるツアー旅行の利点に心底嫉んでいたその時、初老Aの目が光った。

 初老A「あれ? もしかして兄さんも●時のメキシコシティ行きの飛行機に乗るはずだったんじゃないか?」
 ぼく 「はあ、そうなんですよ。だから航空会社に事情を説明しないといけないんですよ……」


 するとその集団はにわかに騒ぎ出した。そして「チケット見せてみな」というので言われるがままに差し出すと、容疑者のアリバイを崩した刑事さんのような不敵な笑みを浮かべた

 初老A「思った通りだ。やっぱり俺たちと同じ便だ。よし、これからガイドさんに兄さんの事情を話してやるよ」


 ……何だって!?


 なんだか事態は予期しない方へ向かいそうだ。

 初老C「ああ、その方がいいな。ガイドさんも兄さんの分も手配してくれるだろ?」
 ぼく 「いや、でもぼくは関係ないですし……」
 初老A「(さえぎるように)いいんだよ。向こうだってこの旅行で結構な金をふんだっくってんだからそれぐらいしてくれてもいいだろ?」
 初老B「そうだ、そうだ。昔は海外旅行なんて夢のまた夢だったけど、今じゃ国内旅行より安くなって……」


 ぼくの意思は不在のまま、話は勝手に進んだ。
 早速皆で添乗員さんのところに行き、ガイドさんに事情を話した。
 するとガイドさんはいやな顔一つせず、ぼくの分まで手配の代行をしてくれた。


 なんて素晴らしい人たちだ! 

 日本人の気質最高! 人情って素敵! ビバ(すばらしい)、 団塊の世代!

 そして、絶交リストに名前を書いてやろうと本気で思ってごめんなさい!

 お世話になった方々に深く礼をした後、その一団は別の場所に移動した。


 その後は空港内で適当に時間を潰していたら出発時間も近づいたので所定のゲートに向かうが、代替便の搭乗ロビーは空港の端っこの端っこ。オフィスで言えば窓際族が顔半分が日焼けしそうな場所だ。


 そうこうしている内に飛行機は準備が整ったようで、搭乗手続きが始まった。
 機内に入ってみると、ここまで来るときに乗ったジャンボジェットとは比べ物にならないほど小さい上に、乗客の数もかなりまばらだ。
 自分の席の上の荷物入れに手持ちのデイバッグを入れていたら、さっきの初老集団が離れた席に座っているのが見えた。目が合うと笑顔で手を振ってくれたので、お辞儀で返した。「席が開いてるからお兄さんもこっち来いよ」とまで言わないところを見ると、所詮は他人なのだ


 まあそんなことはともかく、あと数時間もここに座っていれば勝手にメキシコに着く。目的地はあと少しだ。
 そんなことを思っていたら機体は轟音を立てながら、あっという間に雲の中へ潜って行った。

 しかし離陸して2時間ほど経った頃、シートの上にある「死にたくなかったらシートベルトを締めろランプ」が点灯し、何やらアナウンスが流れた。英語もスペイン語も大してわかっていないので何を言ってるかはわからないが、周囲の反応からするに、どうやらこれから着陸態勢に入るようだ。

 確かダン池田似の旅行代理店の人は、「LAからメキシコシティまでの所要時間は3時間」と言っていた。
 あの人が「毎朝ドンブリ飯を20杯食べる」とか、「CIAの友だちがいる」といった虚言癖の持ち主でないとすれば、到着にはまだ早い。しかし機体は徐々に高度を落とし、窓から見える地上の景色が徐々に大きくなるのがわかる。

 視界に入る外観はさっき見たアメリカとは趣が異なるので、少なくともメキシコ国内には入ったようだが、はっきり言ってここがメキシコシティだという確証はない。メキシコシティの規模は国内ではもちろんのこと、ラテンアメリカという枠で計っても最大級だという。しかし視界に入っている景色はかなり閑散としていて大都市の面影はない。むしろ郊外そのものである。
 とはいえ、成田空港の例を挙げるまでもなく空港が市街地にあるとは限らない。もしかしたらここはメキシコシティの郊外という可能性もある。

 一度飛行機を降りて、進むがままに待合ロビーへ案内される。確かにここは空港には違いないが、やはり成田やLAの国際空港と比べると、外観も設備もかなりこじんまりしている。

 ふと遠くを見たら、さっきの初老集団が行列の尻尾に並んでいた。その先では、同じ飛行機に乗っていた現地の人らしき乗客が、係員らしき人にパスポートとか書類を見せている。そして初老集団の顔には「ここで手続きをしければいつするんだ?」という自信がみなぎっている。やはりここがメキシコシティなのだろうか。

 釈然としないままとりあえず並んでみること数分、“THE・善人”ことさっきの添乗員さんが慌てて駆け寄ってきた。

 「ここで出国手続きをしないでください! ここはメキシコシティではありません!」


 ふざけんなよ、このトンチキどもが! 
危うくこんな辺鄙な田舎で降りるとこだったじゃねーか


 どうやらここは、乗ってた飛行機が小型機ゆえに燃料がメキシコシティまで持たないらしいので、給油をするために寄った中継地らしい。LAでの感謝はどこへやら、さっきまでのぼくの中での彼らの地位は“空から舞い降りた天空人”だったのだが、これを機に“給料泥棒”になった。
 因みにあそこはどこだったのかずっと気になっていたのだが、どうやらMANZANILLO(マンサニージョ)とかいうところだったらしいことが判明した。

MANZANILLO(=マンサニージョ)の位置
MANZANILLOとメキシコシティの位置(クリックで更に大きくなります)


 ご覧の通り、メキシコシティまでは優に500kmは離れているので、もしここで降りていたらリアルにエラいことになっていただろう


 とりあえず給油も終わり機内に戻ったはいいが、実は別の問題が未だ解決されていないことが気になっている。

 そういえば空港から学校までの送迎サービスをお願いしたはずだが、スケジュール的にはこの時点で5時間は遅れている。当初の予定では現地の夕方頃に到着する予定だったが、このままでは早くても現地時間で夜の9時過ぎだろう。いくら時間にアバウトなメキシコ人でも、5時間も人を待っているものなのだろうか。

 ここが日本なら、電報で、
 「トウチャク ゴジカン オクレル」
 と打つか、新聞のたずね人の欄に
 「昌夫 全て解決しました 早く帰ってきて 母・由紀子」

 と掲載すれば万事解決だが、何度も言うようにここはメキシコ。携帯電話もイラン人から買ったテレカも持っていないので連絡のとりようがない。最悪の場合、夜中にメキシコから学校まで一人で向かわなければならないことも念頭に置いておかなくてはならないだろう。

 しかし、世界でもかなり治安の良い場所とされる東京ですら、夜遅くまで遊んでいると悪い奴にだまされて肝臓を売られるともっぱらなのに、夜の異国で大きな荷物を抱えながら公共の乗り物を乗り継いで目的地へ向かうなんて、リスクが大きすぎる。


 そういえばルイスが出発前に、空港からクエルナバカまでの行き方を教えてくれた。彼の故郷であるアカプルコはクエルナバカからさほど遠くないので(それでも陸路で4時間はかかるらしいが)、何度か行ったことがあるという。

 「空港からタクシーで××というバスターミナルに行け。そこからならクエルナバカ行きのバスがたくさん出てる。そしてクエルナバカに着いたらターミナルでまたタクシーを拾って、運転手に学校の住所を見せるんだ」

 ……うーん、バスターミナルの名前は思い出せないが、何…とか……、なる…かな?
 
 「ただし、空港には法外な料金をふっかけてくる白タクがいっぱいいるから気をつけろ! 特に日本人は狙われやすいから、声をかけられても絶対についていくんじゃないぞ!」


 ……ルイスよ、ぼく、もう疲れたよ。
 何だかとっても眠いんだ。




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テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

tag : メキシコ留学体験記1 MANZANILLO マンサニージョ ロサンゼルス ロサンゼルス国際空港 メキシコシティ国際空港

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Author:800ランプ
ルチャリブレがきっかけでメキシコに興味を持つ。
20世紀末、突然そのことを思い出しメキシコへ。民間の語学学校で言葉を学びつつ、運の良さも手伝って浮世を忘れるほどの生活を満喫。
以降も帰国してはお金を貯めては渡墨し、また帰国してお金を貯めては渡墨ということを繰り返していたら、社会のレールから脱落したので日本に落ち着く。
しかし先日、わけあって現実逃避もかねてまた渡墨。今回の日記はそのときのもの。

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