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#27-アカプルコで人生最大のピンチに遭遇<その2>


アカプルコ acapulco メキシコ mexico
Acapulco(=アカプルコ)
太平洋岸のゲレーロ州にあるリゾート地。メキシコシティからだいたい7時の方向へ約300km先に位置する。国内外でも人気で、世界中から観光客が押し寄せる。日本とも縁が深く、かつて伊達藩士の支倉常長が訪れたことでも知られている。近年は一連の麻薬がらみの犯罪や抗争がこのあたりにも波及しており、治安悪化が叫ばれている。


<前回のあらすじ>
 
これといった明確な理由もなくアカプルコに泊まりがけで行ってみたが、大型休暇の時期ということがわかっていたものの甘く見ていたぼくは、どこをあたっても宿が見つからないという事態に遭遇してしまった。
 長時間かけてしらみつぶしに探しても結局見つからないまますっかり夜になってしまったので、もう覚悟を決めて手頃な公園で一夜を明かすことに決めた。
 ベンチで朝日を待っていたら、ちょうど周囲を巡回していたお巡りさんに職質された。事情を説明したら粋な計らいでホテル探しを手伝ってくれたので逆転ホームランを期待できたが、結局状況は変わらずじまい。
 また公園に戻ってベンチに腰掛けていたら、見知らぬ男に「こんな時間に何やってんだ?」 と声をかけられた。
 果たしてこの男の真の目的とは……?〈その1はこちら〉




 恐らく年の頃は40前後の小太り中年オヤジなんだが、実はかねてからコイツはぼくの視界に入っていた。
 もうこんな時間だというのに特に何をするわけでもなく、一人でただ公園周辺をうろついていたので「アイツ、何なんだ?」と不審には思っていた。
 まあ、怪しさという点ではぼくも人のことは言えないのだが、正直声をかけられた時は厄介だなとは思っていた。


 ともあれ、声をかけられた以上は無視するわけにもいかず、かといってぼくの状況はどう考えても不自然なのでこれといったウソも思いつかず事情を説明しようかとも思ったが、不自然なのはお互い様なので、まず「アンタこそこんな時間に一人で何やってんだ?」と聞いてみた。

 何でもこいつは自称家族持ちらしいのだが奥さんとあまり仲が良くないそうで、さっきも大げんかをしたらしい。
 で、家に居たくないから気晴らしにこうしてうろついていたら、公園で長時間じっとしている外国人がいるので気になったから話しかけたというのだ。



 うーん、奥さんのくだりが本当かどうかは別としても、非常に怪しい



 正直なところ、こいつに限らず今の状況では誰ともあまり関わりたくないのだが、なまじっか応答してしまっただけに邪険に接するのも悪かろう。

 とりあえずぼくの事情を手短に説明すると、何とこいつはとんでもないことをいいだした。


「だったら一緒に探してやるよ! 今夜は俺も家に帰りたくないからちょうどホテルを探してたんだ! こうして会ったのも何かの縁だ。今夜は一緒に泊まろうじゃないか!」


 仮にこいつが車寅次郎みたいな性格だとしたら「なんて良い人だ。やっぱり江戸っ子は困ってる人を見ると助けずにはいられない気質だって言うから頼りになるな」と思うが、残念ながらこいつは紛う事なきただのメキシコ人だろう。
 というか、少なくとも今のぼくは今日の周辺のホテルに関してはアカプルコ随一の事情通である。
 こいつが同行したところで事態が改善することは絶対にないので断ったのだが、あまりにもしつこく提案してくるのと自身の疲労具合もあって根負けしてしまい、仕方なく承諾することにした。


 しかし、当然ながらどこも満室で断られる。
 何せ、コイツがあたったホテルは全てぼくが明るい時間帯に行って断られたし、もっと言えばさっきお巡りさんと一緒に行ってもダメだったところばかりなので、見つかるはずもない。

 「な? だから言ったろ?」とたしなめても「大丈夫だ、きっと見つかるよ」とばかりに再開しようとした瞬間、ぼくのトンガリアンテナが急激に反応した。



 やべえ、こいつ同性愛者だ! 絶対そうに決まってる!
 こいつがうろついていたのはナンパ目的だ! 絶対家族持ちなんかじゃない! 
 場合によってはとんでもないことになる!!



 もちろんこれは憶測というかむしろただの偏見でしかないのだが、いくら旅行者を歓迎してくれる気質ということになっているメキシコ人だとしても、初対面の外国人相手に善意のみで協力するというのは不自然である。仮にホテルが見つかったら余計にマズイ事態になりそうだ。
 したがって、当時のぼくの心境は「ホテルが見つかったらいいな」から「ホテルが見つかったらヤバいな!」になったので、

 「やっぱり今日はどこも満室だよ。これ以上付き合わせるのも申し訳ないからここで別れよう。親切にありがとう。じゃあ」

 と言って逃げるようにまた公園へ戻った



 さっきまで座っていたベンチに腰を下ろして再び太陽を待っていたのだが、まだ日の出には相当時間はかかる。
 まんじりともせずただ時が経つことだけを願っていたら、さっきのヤツとは違う別の男と目があった。ぼくよりも一回りくらい大柄な中年男性で、どことなくサッカーの元イタリア代表のロベルト・バッジオを思わせる端正な顔立ちの男だ。

Roberto Baggio(ロベルト・バッジオ)
イタリアサッカーの象徴であり至宝的存在。キャリアの全てをイタリアで過ごし、現役時代はユヴェベントスACミランインテルミラノというセリエAの3大クラブチーム全てに在籍したことでもおなじみ。ワールドカップには90年、94年、98年大会に連続出場。94年大会ではケガを抱えながらも気力でチームを決勝まで導いたもの の、最後のPKを外して優勝を逃したことから悲劇のヒーローとして扱われることもある。決して人の悪口を言わず誰に対しても紳士的に対応する人格者で、有言実行を地でいくプレーヤーだったこともあって、イタリアだけでなく世界中に多くのファンを抱えていることはもちろんのこと、多くの同業者からも絶大な賛辞を送られている。





 やはり今のぼくは状況も見た目もふまえてかなり目立つのだろう。やはり「こんな時間にこんなところで何やってんだ?」と、さっきと同じことを聞かれる。

 とりあえず事情を説明したら、こいつはさっきとは別の提案をしてきた。


 「だったら今夜は俺の家に泊まるか? こんな時間にこんなところにいるのも危険だぞ」


 まさか家の提供を申し出たのはまったくもって予想外だったが、字面だけならメキシコ人でありながらかなりの江戸っ子気質な人間か、かなり達観した敬虔なクリスチャンのようにも思えるが、正直なところついさっきのこともあるのであまり鵜呑みにはできない。

 が、最終的には彼の提案を受け入れることにした。
 現実問題として外国での野宿は物理的な被害を被る確率は非常に高いという事実には変えられないということもあるのだが、この時のぼくは疲労による判断力が鈍っていたこともあって、彼の左手の薬指に刺さっている指輪を見て勝手に既婚者と思い込み、「この人は同性愛者ではなくれっきとしたノーマルで、家には彼の奥さんとか子どもがいるに決まってる!」と確信したからである。
 まあ、こんな発想だから数年後に某テレビ局の集金がらみでも同じ手法でまんまとやられたのは個人的な事情だとしても、背に腹は代えられないとはまさしくこのことである。

 早速目の前の道路でタクシーを拾い、バッジオの家まで行くこととなった。

 車中では、彼が一方的に自分のことを話していた。
 何でもバッジオは芸術家らしく、これから行くところは彼のアトリエらしい。
 で、ぼくに声をかけたのは長年親交のある日本人の親友がいることで日本人には親近感を覚えているからということだった。


 そして、何だかんだで5分くらいかけて彼の家に到着。
 暗くてよくわからなかったが住宅街のようで、さっきまで目にしていた賑やかさが幻のように周囲は静まりかえっている。

 そして彼のアトリエに入ったのだが、確かに画材やらイーゼルやらキャンバスといった多くの美術用品があった。
 しかしここは彼の仕事場のためか、奥さんとか子どもらしき別の家族はハナからいないようだ。

 ものすごく嫌な予感がしたが、「まあ、リラックスしろよ」とバッジオは声をかけてくれたのでとりあえず荷物を置いてソファーに腰をかけようとした時、バッジオの姿に愕然とした。
 何とバッジオは、さっきまで着ていた服のほぼ全てを脱いで早速パンツ一丁になっていたのだ。どう考えてもリラックスの度を超している

 バッジオ曰くアトリエでの自分はいつもこんな感じらしいが、いくら自分の家だからといってさっき知り合ったばかりの外国人を招いて速攻半裸というのはまったくシャレになっていない。

 そればかりか、
 「男同士だから恥ずかしがることはないだろ。だからオマエもさっさとそのTシャツを脱げ!」

 などとぼくにも半裸を強要してくるので、マジでシャレになっていない。この時点では、彼は少なくとも同性寄りのバイであることを確信した。

 最悪の場合、日の出の頃ににはもうお嫁に行けない身体になってしまうか、場合によってはぼく自身が新境地を開拓してしまう確率が現実として高まっているのは明らかだ。


 内心ではまったくときめかない方向でビクビクしていたが、まずはシャワーを借りることにした。
 ただでさえ高温多湿な気候のアカプルコで10時間近くホテル探しをしていたので身体は汚れまくりだからであり、決して彼のためではない。

 かなり簡素で汚いシャワールームで汗を流していたが、よくよく肌を触ってみると体中がザラザラである。どうやら、乾燥して塩になっていたほど汗をかいていたようだ。
 ともあれシャワーを浴びたことで生き返ったような清々しさを覚え、心なしか体力もいくばくか回復したかのようなリフレッシュした気分だった。

 身体を拭いてバスルームのドアを開けると、個人的には今まで肉眼で見たことの無い光景が映っていた。
 そこはバッジオの寝室だったのだが、何と彼はぼくの湯上がりを自身のベッドで待っていたのだ。もちろん半裸で
 そしてあろうことか、というかある意味予想どおりではあるのだが、同じベッドで一緒に寝るよう促された

 「自分はソファーでいいから」と何度も断るが、バッジオは首を縦に振ろうとしない。
 そりゃあ、彼にしてみれば当然だろう。任意で自分の家までついてきておきながら何もさせないだなんて理に適っていないだろう。ましてや諸外国では「家の中に入る=スケベを承諾した」という図式が成り立っているのだから、至極ごもっともある。

 しかし悲しいかな、ぼくは生憎そういう気質はゼロでありバイキュリアス(同性愛の自覚はないが性的な同性愛の文化に興味を持っている人)ですらない。宿を提供してくれたことには感謝はしているが、できることなら最後の一線は超えたくないに決まっている。
 そこでダメ元ながら、僕の事情を拙いスペイン語で説明した。


 「本当に申し訳ないが、自分はノーマルなんだ。こうして宿を提供してくれたことは本当に感謝しているが、同じベッドで寝るわけにはいかないんだ。頼む、今晩はソファーで寝かせてくれないだろうか」


 どこまで本意が正確に伝わったかは分からないが、ぼくとしてはこう言ったつもりだ。さすがに断ったら命の危険に関わるとまでは想像していなかったが、もし彼が逆上して殴られたり今すぐ追い出されたらそれはそれで仕方ないという程度の覚悟を持った上での発言である。

 ところが今回ばかりは、良い意味でぼくの予想とは反する反応が返ってきた。

 
 「ああ、君が同性愛者じゃないことは最初から分かってるよ。だから君には何もしない。ただ、何もしないことは約束するからせめて朝まで一緒のベッドにいてくれ」

 要約すれば、最初からぼくがそのケは無いだろうと踏んでいたが、それを分かった上でぼくを自分のアトリエまで招いたのは純粋な善意で、万が一にもコトに及ぶまでこぎつけられたらラッキー程度しか考えていなかったようだ。したがって、彼も彼でダメ元で自分なりのシチュエーションを作ってみただけのようだった。
 まあ、良識のあるバイということになるのだろうが、結局朝まで同じベッドで寝なければいけないという状況を考えると、いい話かどうかは微妙なところだ。


 まあ、そんな一悶着があったわけだから仮に何もしないという確約が取れても熟睡なんぞできるはずがない。いつしか僕の横でバッジオは軽い寝息を立てていたが、単純に場所が繁華街の屋内から住宅地の屋外に変わっただけで、朝まで寝ずに朝日を待つ状況には変わりはない。

 とはいえ今までの疲労もあって、まどろむ程度ではあるものの何だかんだで1時間くらいは眠れたようで、気がついた時には陽も開けて窓から光が差し込むような時間になった。後にも先にも太陽をこれほど待ち焦がれたのはこの時くらいである。

 そうこうしていたらバッジオも目が覚めたようで、「もう起きてたのか。ところで腹は減ってないか? 近くに市場があるからそこで朝食でも食べるか?」と誘ってくれた。

 こんな状況で熟睡できるはずもないのだが、とりあえず泊めてくれたお礼も兼ねて承諾し、身仕度を整えて市場でタコスを食べた。その際には彼の分のタコス代と宿泊料としてけっこうな額のペソを渡し、お別れの挨拶と感謝の言葉を残してぼくはタクシーを拾った。バッジオのもてなしは大変助かったが、正直あんな事態に遭遇してしまうと改めてアカプルコを観光する気にはさらさらなれなかったので、クエルナバカ行きのバスの時間は分からなかったものの直行でバスターミナルへ向かった。

 
 結局ターミナルでは3時間くらい待ってようやくクエルナバカ行きのバスに乗り、何だかんだで夕方には住まいである語学学校の寮に着いたが、今までの疲労もあって速攻で寝てしまい、気がついた時には月曜の早朝だった。

 当然授業なので身仕度を整えて中庭に行ったら既に講師連中や他の生徒も揃っていたのだが、ぼくを見る視線がいつもとは異なっていることに気づく。
 どうやらぼくはこの週末で外見に違いが出ているほど痩せたらしく、この数日に何があったんだと質問攻めにあった。正確な体重は計っていないが、多分何だかんだで5kgは痩せたと思う。


 話のネタになるかなと思い嬉々としてこれまでの顛末を大ざっぱに話したところ、笑ってくれるどころか明らかに全員引いていた
 まあ、現実的にわざわざアカプルコまで行ってしたことといえば「宿探しに明け暮れた」「その結果見つからず、野宿をしようとした」「かと思いきや行きずりの男の家に誘われてホイホイと着いていった」「しかも結果的には未遂だったものの、状況によっては最後の一線を超えかねなかった」という全員の想像力の限界を超えたことしかしていないのだから当然といえば当然である。
 で、どうやらメキシコでは芸術という分野には一定の理解と社会的地位はあるものの芸術家という人種となると話がちょいと違ってくるという認識があるようで、講師の一人であるミゲルから「芸術家を名乗るようなヤツの言うことは絶対信用するな!」とお叱りを受けて人生最大の危機を迎えた顛末は終わる。





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テーマ : メキシコ
ジャンル : 旅行

tag : アカプルコ ロベルト・バッジオ メキシコ留学体験記2 メキシコの芸術家 メキシコのゲイ

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Author:800ランプ
ルチャリブレがきっかけでメキシコに興味を持つ。
20世紀末、突然そのことを思い出しメキシコへ。民間の語学学校で言葉を学びつつ、運の良さも手伝って浮世を忘れるほどの生活を満喫。
以降も帰国してはお金を貯めては渡墨し、また帰国してお金を貯めては渡墨ということを繰り返していたら、社会のレールから脱落したので日本に落ち着く。
しかし先日、わけあって現実逃避もかねてまた渡墨。今回の日記はそのときのもの。

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